ピンポンピンポンと忙しなく鳴らされる玄関を開けると、そこには尊大な3つ年下の幼馴染が立っていて
「暇。俺と遊ぼう、ルルーシュ」
にっこりと笑ってそう言ってのけたから思わずため息をついてしまった。
my dear child
「スザク、俺は今忙しいんだが…」
その3つ年下の幼馴染の名前はスザク。
隣の家に住んでいることに加えて母親同士が仲がよく、だから自然に年が離れていても
あたりまえのように俺たちは幼馴染で。
本当の弟のように可愛がってきた。
ナナリーと同い年のこともあるが、小さい時は自分に甘えてくるスザクが可愛くてたまらなかったんだ。
見た目もどちらかと言うと可愛いほうだ。ふわふわした癖っ毛も大きな目も笑うと子供らしい表情も。
だがそれはあくまで見た目であって口を開いたら見た目とのギャップに大半の人が驚くだろう。
甘やかされすぎたのだろうか。というか俺自身一番スザクを甘やかしている自覚がある。
そのおかげで見事俺様なやつに成長してしまって…
「ルルーシュ?」
入るぞ、と言われて飛んでいた思考がいっきに戻ってきた。
スタスタと俺の横を通り靴を脱いでいるスザクの肩を掴んでそれを止めた。
「待てスザク。だから俺は今日は忙しくてだな…」
「宿題?それとも誰かと約束?」
「宿題…」
「ならいいじゃん。ルルーシュ頭いいからすぐ終わるだろ?」
不満気に少し頬を膨らませて見上げられるともう、俺は駄目だ。
こんなスザクに勝てるわけがない。とにかく、可愛いんだ。
「…俺の部屋でいいだろ?」
「うん!」
ああ本当に宿題があったのに。
だけどスザクといるのは嫌いじゃないからまあいいか、と思う自分がいた。
適当に冷蔵庫にあったジュースをコップに注いで持っていくと、スザクは俺のベッドに背中を預けていた。
テーブルにそのジュースを置くとスザクの隣、ベッドの上に腰かける。
「今日ナナリーとおばさんは?」
「ナナリーは友達と約束があると言っていた。母上はお前の母親と旅行じゃないか…」
「あ、そっか!」
ぴょん、っと俺の隣に乗ってきて、ベッドがギシッと嫌な音をたてた。
ああシーツがぐしゃぐしゃになった。
けれど何度言ってもこの幼馴染聞かないからもう言わないけれど。
はあ、と内心溜息をつくと、いきなりスザクが抱きついてきた。
ベッドの外に足を出して上半身だけスザクの方を向いていたから腰が痛い。
けれどスザクはそんなのお構いなしに俺の脇の下から手を差し込んで背中に腕を回す。
甘えるように顔を俺の胸に押し当ててきて、その様子が可愛くて腰の痛みが気にならなくなった。
軽く体重を預けてくるスザクに、思わず自分の身体を支えている手を片方外し、スザクの頭を撫でる。
それに気持ちよさそうに目を細めるからなんだか嬉しくなった。
「…俺、ルルーシュに頭撫でてもらうの、好き。」
「え?」
「もっとー」
明日の天気は雨か?雪か?嵐か?いや、それとも槍でも降るのか?
どうしたんだ。こんなに素直なスザクは珍しすぎる。
いつもは頭を撫でると気持ちよさそうにするくせに子ども扱いするな、と怒るくせに…。
でも本当に可愛くて、なんか今胸がきゅんってなった!
茶色い髪に指を絡める。
もうちょっとこうしていたいが…俺の左腕が限界を訴え始めた。
片手で自分とスザクの体重を支えるのはさすがにそろそろキツイ。
そんな時、スザクが更に体重をかけてきたもんだから案の定、ボスっと音を立ててベッドに倒れてしまった。
目をぱちくりとさせるスザク。
ああ、見っともない。スザク一人支えられないなんて。
それに、この体勢は…
「俺を誘ってるの?ルルーシュ。」
「ち、違っ…!!」
ベッドに仰向けになった俺の上に被さるようなスザク。
まずい。非常にまずい。この体勢は、とても危険なものを感じる。
ニヤリ、と今までのあの可愛い笑顔はどこにいったのかと問いただしたくなるほどの嫌な笑顔に顔が引きつる。
どかそうと思って両腕でスザクの胸を押し返すがびくともしない。
確かにスザクは小さい頃から武道を嗜んで年の割にはしっかりとした体つきで力も強いけれど、まさか
こんなことで自分の非力さを思い知るなんて。
スザクの右手が俺の左頬に添えられた。
「…ん、…はっ、ぁ…!」
そのまま逃げることも叶わずされるがままに唇をふさがれる。
最初は触れるだけだったのにしだいに口内に舌を入れられ、生き物の様に動き回られて小さく声が出てしまった。
大体なんでこいつはこんなにキスが上手いんだ。まだ中学生だろう!?そして俺はなぜ中学生にされるままになっている。
でも酸素が薄くなってきて思考も覚束なくなってきた。
そのことを胸を叩くことでスザクにその意思を伝えると、漸く唇が離れた。
「っはぁ…ス ザ ク !」
目一杯睨むと「だってルルーシュが誘ってきたんじゃん」と悪びれた様子もなくそう言ってきた。
と、またスザクが顔を近づけてくる。
思わず目をぎゅっと閉じた。
ぼすん
「…ぼすん?」
予想していなかった音。
あれ?と音の発信源の隣を見ると、真横にスザクの顔があった。
「期待した?」
「な…っ!?」
悪戯が成功した子供のような顔。
なんだか恥ずかしくなって、近くにあった枕を思いっきりスザクの顔面にぶつけてやった。
「ちょ、なにすんだよルルーシュ!」
「お前が悪い。」
「なんだよ、本当に期待したのか?」
「……今すぐここから追い出してもいいんだぞ、スザク。」
「いや、無理」
するとぎゅっとまた俺に抱きついてきた。
右腕に頭を乗せられ、未だ仰向けだった俺は向かい合うようにそちらに身体を向けた。
「…どうしたんだ?」
「んー今日はすごくルルーシュに甘えたい気分。こうしていたい。」
こいつなんて可愛いことを言うんだ…っ!!
まずい。どんどん顔が熱くなってくる。
スザクは体勢を整えるように俺の胸に顔を埋め、さらに抱きついてきた。
「あーでも。」
「なんだ?」
熱を冷まそうと空いている手で顔を扇いでいるともぞもぞ、っとスザクが動いた。
「ルルーシュがシたいなら俺喜んで相手するよ?」
「っ!!この馬鹿!」
顔を上げてニヤっと笑うスザク。
でもそんなスザクさえ好きだと思う俺も相当馬鹿なのだろうけど。
そのままスザクの頭を抱き込み、「俺もこの方がいい」と言うともう一度スザクが笑ったのが分かった。
夕方になり、帰ってきたナナリーがベッドの上で抱き合って寝ている俺たちを見て「あら」と言って俺たちを起こした。
目を覚ました俺が妹に見られたことにショックを受けたのは言うまでもない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
はい、中学生スザク×高校生ルルーシュなんてイロモノですすみません!
楽しかった!でも最初予定してたのと話が少し変わってしまった…まあいつものことですね。
最初はスザクを小学生にしようかと思ってたんですが、やっぱり色々させたいので中学生に(こら!)
それにしてもルルーシュがスザクバカになってしまった。
ちなみにスザクは確信犯(笑)
2007.04.09