ルルーシュ・ランペルージはその日大変機嫌が悪かった。
それは誰も話しかけれないほど、明らかに。
クラス一同が畏縮する中、友人代表としてリヴァルがその対応に無理やりあてられた。
さあリヴァル頑張るんだ!今この状況を打破できる可能性が一番あるのは君しかいないリヴァル!
声に出さずそう言う級友たちにリヴァルは半分泣きそうになりながら勇気を出してルルーシュへ近づいた。
「あのールルーシュ君?なんか…あった?」
「あぁ?」
勇気を持って声をかけたリヴァルは、しかしルルーシュの発せられた言葉にヒィと小さく声を出した。
とにかく険悪だ。ただ声をかけたというだけなのに地を這うような声で返事をされた。
しかしそこはクラスの切望を背負ったリヴァル。めげずに再び声を出した。
「いや、その…機嫌がよろしくないかなぁなんて…」
と言ったところで再び睨まれた。
もう嫌だ、確かに友達だ。だけれどもこのままだと俺の寿命が縮んでしまう!!
リヴァルは涙目で後ろを振り返るとファイト、とでも言いたいのか、両手をぎゅっと握ったシャーリーと目が合った。
さあどうしよう。
ここでルルーシュの気をひける話題はなんだ?よく考えろ、俺!ここで地雷を踏んでしまったらもう終わりだ。
何が終わりかって、そりゃ俺の人生だよ人生!
よく見極めるんだリヴァル。俺ならできる、俺ならできるぞ!…多分。
リヴァルは相当混乱しているようだ。
落ち着け頑張るんだ、と先ほどから自分で自分に言い聞かせている様子ははたから見れば滑稽で。
だけれど今この教室内には彼のその不穏な動きを笑うものなど誰ひとりとしていなかった。
みんなただ一人で室温を3℃は下げているだろうルルーシュの機嫌を直してもらうのを祈るだけなのだ。
よし、とリヴァルは小さく意気込んだ。
「あのさ!そういえばお前の幼馴染のえーっと、スザク!スザクとは会ってるのか?」
リヴァルが思いついたのはそう、彼の幼馴染である枢木スザク。
かなり甘やかして溺愛している彼だ、きっと彼の話題ならルルーシュの機嫌を直せるかもしれない。
ルルーシュが少し反応したのを見て、よし俺よくやった!とリヴァルは内心喜んだのだが
「いま俺の前でその名前を出すなリヴァル。」
ああ俺は地雷を踏んだようですみなさん。
さらに室温が5℃くらい下がっちゃった。ごめんよみんな。でも俺、この選択が一番だと思ったんだ。
だっていつもあんなに甘やかしてるんだぜ?あの我が儘ボーズの相手を嫌がらずにむしろ喜んで相手してるんだぜ?
ああそうか。ここはナナリーにしとくべきだった。
あのボーズより地雷を踏む可能性は低いじゃないか。いや、むしろないじゃないか。
今さら悔やんでもだめか。俺にはもうどうすることもできないよ。
更に表情を険しくさせたルルーシュにリヴァルは涙を堪えるので必死だった。
「スザクめ…俺が何でも許すと思ったら大間違いだぞ。」
どうやら喧嘩をしたようだ。
間違いなくルルーシュの不機嫌の原因は枢木スザクなのだ。
険悪なルルーシュはリヴァルを置いて一人自分の世界に入る。
ブツブツと言いだしたルルーシュはもう誰の手にも負えなかった。
ピピピピピ、ピピピピピ
急に携帯の着信音が鳴り響いた。
誰だこんな時に携帯を鳴らしたのは!
そんな勢いでみんな犯人を探そうとあたりを見渡すが誰もが違う違うと首を横に振る。
一体誰だ!?さらにルルーシュの機嫌が悪くなるかもしれないじゃないか…!!
クラス一同がそう思ったとき、その犯人はとても意外な人だった。
「もしもしルルーシュ…?」
「……何の用だ」
え、と一同が注目すると、そこには不機嫌最高潮を顕にしたルルーシュ。
顔はもちろんだが声も地を這う。
もしかして電話の相手は、とリヴァルが思うと、その相手の名前はルルーシュ本人の口により出された。
「ねえルルーシュ。…怒ってる?」
「俺はお前と口をききたくないと言ったはずだ、スザク。」
やっぱり!!!
どうして電話なんかかけてくるんだよ枢木!
リヴァルがそう思ったその時、
「ごめんルルーシュ、許してよ…。俺、ルルーシュと話せないなんて…辛いよ。」
「な…お、お前」
あれ、と誰もが疑問に思うほど急に、ルルーシュの声が変わった。
焦ったような声。今までのルルーシュの低い声はどこにいった?
「本当にごめん。俺が悪かった。…本当に反省してるんだ。だからお願い?もう口を利かないなんて言わないでよ…」
「お前本当に反省しているのか?」
どんどん声が穏やかになっていく。
それは機嫌が良くてもクラスメイトには向けられることのないほど、穏やかなそれ。
「反省してる!!俺…ルルーシュに嫌われたら、もう…生きていけないよ…」
「分かった、分かったから!だからもうそんなこと言うなよ、な?」
と思ったら次は慌てた声。
周りはもちろん、一番近くにいるリヴァルにも会話の内容は聞こえていない。
一体何を言われているのだろう、と疑問に思うがそれを本人に聞くような自殺行為はできない。
「…もう怒ってないのか?」
「…ああ、もうお前があんな馬鹿なことをしないのなら…許してやるよ。」
ああ、ルルーシュが堕ちた。
喧嘩の内容も電話の内容も分からないが、ただそれだけはみんな分かった。
特にルルーシュと仲の良いリヴァルたちはルルーシュのスザクへの溺愛っぷりを知っている。
やっぱりどんなに怒っててもルルーシュはあの年下の幼馴染に甘いようだ。
「へへへ!愛してるよ、ルルーシュ!!」
「な…!!お、お前そんなこと言うなよ…!!」
なんだと言うのだ。
あのクールが売りのルルーシュが顔を真っ赤にして照れているではないか。
一体何を言った枢木スザク。一体お前はルルーシュの何なんだ枢木スザク。ただの幼馴染じゃないのか枢木スザク。
「ね、ルルーシュは?ルルーシュは俺のこと愛してる?」
「…当たり前だろ」
「ちゃんと言ってよ!俺、聞きたい!!」
「こ、ここで言えるか馬鹿が!…後で、な」
すっかり仲直りしやがって。
ああ、あんなに機嫌の悪かったルルーシュが嘘のようだ。なんか周りに花が飛んではいないだろうか?
なんだよ。お前ら本当にどういう関係?なんで甘ーい空気だしてるの?しかも電話でさ。
リヴァルは誰に言うこともなく心の中でそう思う。
きっとみんな同じこと思ってるに違いない。
そうか、つまりはこういうことだ。
嘘のように機嫌が良くなったルルーシュは今にも鼻歌を歌いだしそう。
今日、ルルーシュを除くクラス一同の心が完全に一致した。
彼の機嫌はあの子次第!
なんて傍迷惑な奴ら!本当、お前らどういう関係?
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中学生×高校生第2段です。
このシリーズのモットーはルルーシュはスザク馬鹿で甘バカップルですから!
中学生×高校生の見どころは年齢差と学校が違うことだと本気で思ってます、あたし(笑)
喧嘩の原因はご想像に。きっとスザクが何かやらかしたんですよ。そして二人の関係はナナリーしか知りません。
ちなみに不自然な空間を反転すると何か出てきますよ!大したものじゃありませんけど。
2007.04.14