戦後2人は離れないで、誰もいなくなった枢木神社で一緒に暮らしてます。
ちなみににょたルルと隠してるけど俺スザクなパラレル。
そこだけを注意していて、あとは深く考えないでください。










だって俺は本当は言いふらしたかったんだ。
「こいつは俺のなんだ!」って。





俺たち健気なこどもたち





「それじゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい、スザク」

ガラガラと日本古来の玄関を開けて俺は鞄と、ルルーシュの手作りの弁当を持つ。
ちなみに俺とルルーシュは、同じ、アッシュフォード学園に通っている。
ただ、学校では全くの他人、だけれども。
一段高い玄関に立って毎朝俺を見送るルルーシュに、頭に手を回して屈めさせ、軽くキスをしてから玄関を出る。
俺が家を出てから10分後、ルルーシュも家を出るのが毎日の決まりごと。

どうして俺とルルーシュが同じ家に住んでること(もう夫婦同然だと俺は思ってる)を周りに隠してるのか。
そんなの、ルルーシュと俺には、占領した国の皇女と占領された国の首相の息子、という関係が付きまとっているから。
ルルーシュの身分はうまいこと隠しているが、あいにくなことに俺の身分は知られている。
だからルルーシュの身分がばれないためにも黙っている。
たしか、表向きな理由はこんなんだったと思う。

長い枢木神社の階段は、ルルーシュにはキツイだろうなと、毎日思いながら慣れたその階段を駆け降りるのだ。





「おはよう」

教室でクラスメイトと話しているとルルーシュが登校してきた。
笑顔を振りまいて(それが作り物だと俺は知っている)人が周りに集まるのをにこやかに受け入れる。

「まったく、どうしてあのクラスは俺に構うんだ?鬱陶しい…」

家に帰ると毎日、ルルーシュはこう愚痴をこぼす。
あの時のルルーシュの顔は、ルルーシュを女神様だとか天使だとか気持ち悪い比喩をしている男たちにぜひ一度みせてやりたい。
いや、ルルーシュの本当の顔を見るのは俺だけで十分だ。
やっぱり他の誰にも見せてやるものか。

とにかく、本心を隠したルルーシュの猫かぶりは見ていて笑いをこらえるのが必死だった。
けど一度、そう言ったらルルーシュに「自分のことを僕と言い、俺に負けないくらい作り笑顔をしているお前に言われたくない」 と言われて、それもそうだと思った。

「おはようございます、スザクさん」
「おはよう、ルルーシュ」

学校での最初の会話。
ただのクラスメイトである「ルルーシュ・ランペルージ」と「枢木スザク」の会話はこの程度。
だけどそのとき俺に向けられる顔は、学校での唯一のルルーシュの本当なのだと、俺は知っている。
だから俺もルルーシュにだけは本当を向ける。
話せないのは苛立つこともあるが、それより誰も知らない本当を共有しているという事実は酷く快感だった。
俺の席からはルルーシュが見える。
誰も知らない2人だけのサインで話すのは楽しかった。





「あの、ランペルージ。ちょっと、いいか?」

昼休み、ルルーシュの弁当を見せびらかしながら食べ終わると、ふいにそんな声が聞こえた。
思わずその発信源を見る。
教室のドアに、確かちょっと前からルルーシュのことをやけに見ている別のクラスの男がいた。

(またか…)

恐らく、というか確実に告白だ。
見た目が綺麗で、さらにか弱いお嬢様なルルーシュ(作りものだが)に告白する馬鹿は少なくない。
ちらっとルルーシュを見ると「何ですか」と微笑しているが、その顔の下に「鬱陶しい」というのが隠れていた。
ルルーシュと一瞬、目が合う。

(告白されてんじゃねーよ、馬鹿)
(煩い。それは俺じゃなくて相手の馬鹿に言え)

中庭に、と連れだされるルルーシュと目でこんな会話をした。

(いいか。何かあったらすぐに俺を呼べよ)
(分かってるさ。それに、大丈夫だろ)
(お前はもっと警戒心を持て)
(警戒心は十分持ってるさ)

ルルーシュは大人しいふりをしてお淑やかにその男のあとをついていった。





さりげなく窓辺まで移動すると、そこからよくルルーシュが見えた。
そこは俺とルルーシュで決めた場所。

呼び出される時はこの場所に。

教室の窓からよく見え、かつ何かあったときにすぐに駆けつけれる。
幸いなことに今までルルーシュに手を出そうとした男は俺が教えた護身術により本人に伸されている。
それでもルルーシュにそのような噂がたたないのは一重に「ルルーシュはか弱いお嬢様」という馬鹿な男たちの認識のおかげと 言えよう。

(…おもしろくない)

ルルーシュは俺のなんだ。

告白してくる馬鹿がいないように全校にそう言ってやりたい。
第一、その日家に帰ってからルルーシュを宥めるのは誰の仕事だと思っているんだ。

「どうしたんだ、スザク」
「え?あ、ちょっと…」
「何見てんだよ…ってああ、ルルーシュじゃん。あいつもよく告白されるよなー」
「…だね」

外を見ているとそれに気づいたリヴァルが寄ってきた。
ルルーシュは絶対にOKしないって噂なのにさ、毎回懲りないよな、告白する男たち。
全くもって同感だ。
ルルーシュが俺以外になびくわけない。(過信じゃなくて事実だ)
ああおもしろくない。
どうして自分の彼女が他の男にこうも告白されなければいけないのか。

「あれ?なんか…やばくね?」

イライラしていると前でリヴァルがそう言った。
何だ、と思って下を見ると、嫌がるルルーシュの腕を握った先ほどの男が無理やりルルーシュに迫っていた。

「あの男、確かどっかの運動部のエースだったような…。ルルーシュじゃ力で勝てないって!!」

男は無理やりルルーシュの腕を取り、腰に手を回した。
どうやら、リヴァルの言うとおりただの男ではないらしい。
護身術で防ぐことができないくらい、相手の男は力が強いようだ。

(ルルーシュ!!…あの男っ!!)

ギリ、と窓枠を持つてに力がこもる。
飛び出していきたい。
だけど、ここで飛び出したらせっかく隠してきた関係がばれてしまう。

「スザクっ!!」

キスをされそうになったルルーシュが大きい声で俺の名前を呼んだ。
それを聞くか聞かないかと同時に、窓枠に手をかけて2階の教室から飛び降りた。

「お前なにやってんだよっ!!」

スザク!?と上からどよめく声が聞こえる。
眼の前でルルーシュの腰に手を回したままの男を殴り、ルルーシュを自分の腕の中に引き寄せた。
隠す?ああもう知るか!そんなことどうでもいいんだよ!!

「お前…どの面下げて俺のルルーシュに手を出そうとしてんだよ!!」
「く、くるるぎ…?」

眼の前で俺が殴った頬を押さえて床にへたり込む男が俺の名を呼んだ。
ああ、確かこの男とは少しだけ話したことがあったな。
上からも未だにクラスメイトの驚く声が聞こえる。

「人がせっかく見逃してやってたのに…大人しくルルーシュに振られてろっていうんだよ、馬鹿が!」

もういいや。
実際、学校でルルーシュに触れないのも他の男が寄ってくるのも全部気に入らなかったし。
もういいよな、ルルーシュ。

「ルルーシュは俺のなんだよ!!」

思いっきり深く、キスをしてやった。





あれから灰と化した男をそのままに、教室へと移動する。

「…大丈夫だったか、ルルーシュ」
「それはこっちのセリフだ馬鹿が。2階から飛び降りてきて…」
「だってあの男がお前にキスしようとしてたから!!」
「……助かった、ありがとう」

ガラリと教室のドアを開けると、そこには呆然としたクラス一同。
ああそうか、本性ばれたんだったな。
ちなみに俺は今、ルルーシュの腰に手を回している。
ルルーシュの方を見るとちょうど眼があって、こいつの顔がいやらしく笑ったから俺もそれに乗っかった。


「「「!?」」」


クラス全員が見る中、ルルーシュにキスをする。
ルルーシュも抵抗することなく、むしろ背中に手を回してきて積極的にキスをしてきた。
しばらくルルーシュの唇を堪能して、クラスに向かって一言。

「俺たち、こういうことだから。」

にっこりと笑って言うと、どこか青ざめたクラスメイト。
その様子がおかしくて隣を見ると、ルルーシュもあくどい顔で笑っていた。

「あの…スザク?ルルーシュ?」
「なんだよリヴァル」
「えーと…スザクさん、その言葉遣いは…」
「ああ、スザクはこれが地だ。今までのは作り物。だいたい僕とか気持ち悪かったな」
「ル、ル…?ルルも、それ…」
「ルルーシュこそ気持ち悪かったじゃないか!私、とかあのお嬢様みたいな口調!」
「うるさいな。お互いさまだろう!」
「ああ、みんな。作るの結構疲れるんだ。俺たち、もう地でいくから。」

呆然としたままのクラス一同。
ルルーシュに幻想を抱いていた男どもがルルーシュの本性を見て「嘘だ嘘だ…」とつぶやいて撃沈している。
はっきり言ってすっげえ気持ちいい!

「え、っと…いつから?」
「何が」
「いつから、その、付き合ってんの?」

遠慮がちなリヴァルの声。

「ていうか俺ら、7年前から2人で住んでるし」

驚きの声を上げるクラスメイトを爆笑してしまった。










「面白かったな、今日」
「お前、本当性格悪いぞ、スザク」
「だってあいつら…!!」

あれから特に相手もしないで、本当に地で生活することに決めた。
ルルーシュと俺がつき合っていることは、俺たちの本性とともにすぐに学園中に広まって、また教室で爆笑した。
わざわざルルーシュを見にきた男どもがルルーシュに冷たくあしらわれて灰と化して帰るのは傑作だった。
さらにその度に俺はルルーシュにキスしてやったのだから、その効果は倍増。

「明日から一緒に学校行こうぜ、ルルーシュ」
「そうだな」
「教室で一緒に弁当食べようー」
「はいはい」

こんな言葉遣いの皇女がいるとか、誰も思わないだろう。
いざとなったら俺が守ってやるから、もう学校でも隠さない。
隠していて今日みたいなことになるほうがよっぽど馬鹿らしい。
ルルーシュと馬鹿みたいな会話をしながら、これまた馬鹿みたいに長い枢木神社の階段を上る。
俺はどうってことないのだが、やっぱりルルーシュにはキツイようで。
途中でへばりそうになったルルーシュをいきなり抱きあげたら腕の中で抗議の声を上げてきた。

「お前に付き合ってるといつ帰れるかわかんねーよ」

ぶつぶつ言いながらも大人しくルルーシュが俺の首に手を回す。
それを確認して、一気に駆け上がった。



ああ最高!
明日から学校でもルルーシュは俺のもんだ!




















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これまた突発スザルルです。
しかも俺スザク×にょたルル。非常に楽しかったのです。
突発だからつっこみどころ満載ですが、あえて目をつぶってください。
ちなみに短編で初のにょたルル!



2007.07.06