こんなにも悲しくて汚くて醜いものが愛だというのだろうか。


ロイドさんにそう言ったら、「きみ気持ち悪いよ〜」と一蹴されて「僕もそう思います」とだけ答えた。
隣で聞いていたセシルさんが少し顔を歪める。

「あのね、スザク君」

セシルさんに笑顔を向けると、彼女は口を噤んだ。




ランスロットの調整も終わり部屋に帰る。
薄暗くて空気の澱んだ部屋。温かさとは無関係のこの部屋は、何か僕の心の中みたいだった。
軍服も脱がずにそのままベッドに飛び込む。
上等でないそれはギシリと耳ざわりな音を立てて唸った。

答えなんて知りたくなかった。
セシルさんが何を言おうとしていたのかなんて分からないけれど、彼女はなにか僕に答えを出させる、 そんな言葉をくれるような気がして、だから笑顔で誤魔化した。
ロイドさんは相変わらず気持ち悪〜いといつもの口調で言う。
そんなの僕自身思っていたことだから、腹が立つとか、そういうのは全くなかった。

ごろりと寝がえりをうつとまた軋むベッド。
こんなにすぐ音が鳴るなんて、セックスのときはうるさくてたまらないだろうな、なんて思う。

(う、わ…さいてい、ぼく)

その時に思い浮かんだのは幼馴染で親友の彼。
艶めかしく涙を流しながら僕の下でよがる。

「や、スザク、んぁ」

雪花石膏のような肌に浮かぶ朱い痕。
涙を流しながら恥じらいながら気持ちいと啼く心地の良い声。
涙でぬれて宝石のように輝く紫の瞳。
彼はいやらしいに違いない。
細く綺麗な彼の身体を割ってその奥に僕自身を挿げるとその背をしなやかに反らせ、 いやいやと言いながらも動きに合わせて腰を振る。
彼の奥はきっとどうしようもないくらい気持ちいいはずだ。
事後は狭いベッドの中で抱き合いながら寝て。

(うっわぁ…だからぼく、気持ち悪いって…)

そこまで想像して、自分自身が元気になっているのが見えてしまった。
溜息をつきながら手探りでティッシュを探し、ズボンからそれを出して扱い欲を解放させる。
そのときでさえ彼の痴態を想像していて、本当、僕ってなんて最低で気持ち悪いやつなんだと思った。

(恋、って)

丸めて投げたティッシュがごみ箱に入らなくてイライラした。
でもそのままにしとくのは汚いからまだ開放感からだるさの残る体を立たせてそれを拾い捨てる。
ついでにこのまま風呂に入ろうと着替えを掴み脱衣所へ向かった。

(愛、って)

冷水を被って頭を冷やす。
そうしてようやく落ち着いた体を乱暴に洗った。

ルルーシュが欲しい。ルルーシュが、ルルーシュを、ルルーシュ、ルルーシュ、ルルーシュ。
彼を攫いたいと何度思ったか。
ナナリーからも引き離して、僕しかいない部屋に閉じ込めて、僕だけを見て、僕だけを知って、僕だけを。

(もっと綺麗なものだと思ってた)

明日は彼に会えるだろうか。
そうして僕は明日また幼馴染として彼と接することができるだろうか。
そろそろ爆発しそうな感情が渦巻いている。
僕以外の誰かと話す彼を見るたびに、キスして無理やり犯してやろうとさえ思ってしまう。
そんな自分をいつまで抑えられるのか、限界が近いような気がして、それが怖い。

(愛って)

こんなにドロドロしてて汚くて醜いものだなんて、思ってなかった。















ルルーシュは今はまだ一般市民として生活しているけれど、頻繁に兄弟たちと連絡をとったり会ったりしているようだ。
その気はないと言ってはいるが、彼は皇族に戻るのだろうか。
まだ籍は消えていない。第11皇子としての席は残っている。
もし彼が皇族に戻ってしまったら、今よりさらに僕の手に届くものではなくなってしまう。
ルルーシュが皇族に戻ると言ったとき、その時はきっと、僕は本当に。




















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枢木さんまさかの●慰(殴)
なんか病んでる気がするのは気のせいだと思いたい。
スザクはルルーシュが好きすぎるんです。



2008.06.08