turn out
女の子ルルーシュ



「だから俺は着ません。絶対に、お断りします。」
「駄目よルルちゃん!これは会長め・い・れ・い!」
「そんなこと知りません。俺は着ないと言ったら着ませんから。」

そう言うのは生徒会副会長ルルーシュ・ランペルージ。そして彼、 いや男子制服を身に纏った彼女の目の前には色とりどりのドレスを何着も広げる生徒会会長ミレイ・アッシュフォード。
そう、事の発端は例の如くミレイの思いつき。

「暇だわ。そうね…ルルちゃん!あなた女装しなさい!!」

正確に言うとルルーシュは女なので女装ではないのだが、 周りに性別を偽っていることを知るのはこの場にはミレイしかいない。
故に『男子生徒』に女物の服を着せるということでミレイはそう言ったのだ。
その言葉にもちろんルルーシュはその端麗な顔の眉間に大きく皺を刻んだ。
自分は性別を隠しているというのに、どうしてこの人はそれを無駄にするようなことを言うのだろう。
そんな意味を含めてミレイを睨むが、彼女にそんなのは効くはずがない。
どこから取り出したのか、何着ものドレスをルルーシュの目の前に突きつけ、冒頭のような会話になったのだ。
(ちなみにリヴァルをはじめ他の役員はみな傍観を決め込んでいる)
そりゃあルルーシュも年頃だ。いくら自分から男として生きる道を選んだのだとしても、 同じ年頃の女の子のような服も着てみたいし化粧もしてみたいと多少は思うのだ。
それは恋人ができた今なら尚更。
自分がそのように出来ない分ナナリーにはと精一杯女の子らしく可愛らしい格好をさせて、 自分はそれで納得しようと思っているのに。
そんなことを全て知った上での会長の発言だから、ドレスが着れるという喜びと、 女の子のような格好をしてみたいという気持ちを今まで押し殺してきていたのに、 という反動の間でルルーシュは揺れていた。

「あれ?何してるんです、会長さん」
「来たわね!我が軍の最終兵器枢木スザーク!!」
「へ?」

と、そんな時にミレイからしてみれば最高の、ルルーシュにしてみれば最悪のタイミングで生徒会室に やってきたルルーシュの恋人、枢木スザク。
何も知らない彼が理解できたのは、ただ一つ。

「…最終兵器?」

そこか!と発言者を除く全員が心の中でつっこんだ。

「ねえスザク!ルルちゃんのドレス姿、見たいでしょ?」
「…ドレス?」
「そう!スザクもルルちゃんに言ってくれない?」

もちろんスザクはルルーシュが女の子らしい服装に憧れていることに気づいている。それは会長も同じ。
こうと決めたらそれを貫き通すルルーシュは、きっと着たくても自分から着ることはできない。
ああこれは会長なりの優しさなのだと、スザクは嬉しくて微笑んだ。

「うん。僕も見たいな、ルルーシュのドレス姿」

結局、しばし続いた二人の攻防戦はスザクのこの一言でルルーシュは渋々といった風に、 しかしどこか嬉しそうにドレスを着るという結果になったのだった。


(ちなみにスザクが言えばルルーシュは断ることができないから最終兵器なのだとスザクは後から聞かされた。)




2007.05.07










let go of



まず最初にゼロの正体を知ったとき、妙に納得した自分がいた。
確固たる確証はなかったにしろ、僕を構成する細胞のひとつひとつはルルーシュが分からないはずはないのだ。
それに考えてみればわかる。
ただの一軍人、それも名誉にしかすぎない自分をどうしてあそこまで執拗に説き伏せようとしていたのか。
(きっとそれはゼロ、いやルルーシュは僕が欲しかったからだ。)
どうして急に出席が減ったのか。
(僕が休む時、黒の騎士団の活動があったときとほぼ同じに彼は休んでいたじゃないか。)
思い出せ。7年前のあの日、彼はなんと言ったか。
(ああ、憎悪に満ちた目でブリタニアをぶっ壊すと言ってたじゃないか。)

枢木少佐としてゼロを殺すのは難しくても枢木スザクとしてルルーシュを殺すのは簡単。
けれどそれはルルーシュとて同じだったはず。
彼は少なくとも僕がユフィの騎士と任命されるきっかけとなったあの日から、 僕がランスロットのデヴァイサーだと知っていたはずだ。
それなのに僕が今も生きているということは

(ああ、僕も君もこの想いを捨てられないんだな)

なんて愚かなんだろう。
君が敵だと分かった今でも、愛してる、なんて。


いや、愛してる なんて生温い。
これはきっと 執着。




2007.05.08










negative
assure you と関連してます



ああ どうして
彼の隣にいると 誓った ばかりなのに

急な呼び出し。
一世一代のプロポーズもどうやら成功したようだと、泣いて喜んでくれた彼を残して渋々家を出た。
本当は呼び出しには応じたくなかった。
けれど下っ端の僕が呼び出しを拒否することなんてできないし、ましてや上司の愛するランスロットを壊して帰ったのだ。 仕方がない。
まだようやく夜が明ける頃だった。
日付が変わってからの帰宅に加え恋人との時間。
眠っておらず軍務と情事のダルさの残る身体を半ば無理やり引きずるように行った特派の施設では、 そんな時間だというのに気持ち悪いくらいに笑顔の特派一員に迎えられた。

「おめでとう、スザクくん」
「なにが、ですか…?」

怒られる覚えはあっても祝福される覚えはない。
いつもより笑顔のセシルさんの後ろから、パソコンを持ったロイドさんがひょっこり現れた。

「あれ〜やっぱり知らない?見てよこれ〜」

独特の間延びする声に従いその画面を見て、僕はその事実を信じたくなかった。

枢木スザク准尉、ユーフェミア副総督の騎士に任命

嫌だと叫びたかった。
嘘だと言ってほしかった。
どうしてどうして。僕は、俺はルルーシュの隣にいると誓ったばかりなのに!



やっとのことで抜け出すことができた軍。
一目散に向かった目的の彼は、酷く悲観的な笑顔で僕に言った。

「おめでとう」

あの日僕は君の手を取って、逃げだせばよかった、のかな。

そんなの今となっては分からなかった。




2007.05.08