out look



この世界は美しく儚く、そしてなんて醜いのだろう。


(彼ら兄妹を、彼を、受け入れない世界なんて)


屋上に寝転んで、うんと手を伸ばした先には惚けてしまうほどの青空、青空、青空。
届かない。空はこんなにも綺麗なのに。
どうして世界は、こんなにも醜いのだろうか。


(彼が存在できない世界など、意味がない)


僕が変えてみせる。
僕が、君たちにとって美しい世界に変えてみせる。

だから、


「ゼロなんて、もう やめて。」


君と僕の世界への見方は変わらないのにね。
僕たちはこの世界を醜いと思っているのにね。
なのにどうしてだろう。
どうして僕らの道は交わらなかったのかな。

隣にいる君に手を伸ばすけれど、やっぱり届かない。
きれいなきみ。
汚れた僕には、届かない。

了承の返事なんて期待していなかった、ただの願望。
君の口から告げられたのは、やっぱり拒否。

ああ、世界はこんなにも醜い。




2007.05.09










maintain



気がついたらいつも眼で追っていた。
それは親友に久しぶりに会えたからだと思っていた。
けれどそれはどうやら違うようだった。

彼が誰かに笑いかける。(その対象が男子であれ女子であれ、酷くイライラする。)
彼が学校に来ない。(軍所属というだけでも嫌なのに。)
彼がクラスに馴染んでいく。(それは非常に良いことだ。けれど彼を知るのは俺だけでいいと思う。)
彼がゼロを、俺を拒否する。(あの時は心に空洞ができたようで、涙すら出なかった。)

そうか、俺はスザクに 恋 してる。

自分でもこんな醜い感情の理由が分からないときは、ストレスの原因でしかなかった。
けれどそれが恋をしているからだと気付くと、途端に自分が人間らしく思えた。

けれどこの想いはあってはならない。
彼は俺に親友であることを求めているはず。
親友に、それも同性からこんな感情を向けられていると知ったら、彼はどう思うだろうか。

(困ったように笑って。そして俺を傷つけないようにやんわりと、言葉を選んで断るんだろうな。)

ぎこちない関係は嫌だ。
スザクとそうなるくらいなら、俺はこの気持ちを封じるのみ。

さあ、維持するんだ、俺。
失ってはいけない。踏み越えてはいけない。
維持するんだ、この親友という関係を。

(でないと 愛して と縋りそうになってしまう)




2007.05.09










ある日の生徒会室2



「あ、ごめんね?痛かった?」

「そんなにツンツンしないで、ね?」

「さらさらしてて気持ちいいな」

「やっぱり綺麗だよ。君は他のなにものにも劣らない」

「好きだよ。だからこっち向いてほしい」



「…なんですか、あれ」

そう言ったのはリヴァル。そして彼の視線の先にはスザクとルルーシュ。
ただいま足を踏み入れたばかりの彼はとりあえず入口の近くに座るシャーリーに小声で聞いた。

「触らせてもらえないのは自分の気持ちが伝わってないからだって、スザク君が…」
「…それで、あの言葉?」

こくりとシャーリーが頷いた。リヴァルはもう一度視線をそちらにやる。

「でも何ですか、あれ。愛の告白するみたいな甘い言葉と表情は」

付け加えよう。
リヴァルの視線の先にはスザクとルルーシュと、そしてアーサー。
スザクはアーサーと視線を合わせるように床に横になり、猫じゃらしを持ってそれはそれは真剣に告白をしている。
一方ルルーシュはその近くで書類を作っている。
いつもとなんら変わらない表情。だからこそ、リヴァルは感じた。

(ルルーシュすっげえ機嫌悪いじゃん…)

にこにこと微笑むスザクとただ機械的に書類を作り上げていくルルーシュ。
するとすぐにルルーシュは立ち上がり、書類を持ってこちらまで来た。

「はい、これもう終ったから。それじゃあ、俺は自分の分は終わったから帰るな。 …あの馬鹿にしばらく俺の視界に入るなと言っておけ。」

問答無用、背筋が凍るような笑みを添えられ言われれば断れるはずがない。
やっとのことで頷くと、ルルーシュはまた無表情になり静かに生徒会室を後にした。

(ルル、すごく怒ってたね…)
(まあ…ルルーシュは何気に独占欲強いからねえ)



「あれ?ルルーシュは?」

ルルーシュの不在に気づき彼の所在を尋ねてきたスザク。
リヴァルがルルーシュの伝言通りに彼に伝え、顔を真っ青にしたスザクが猫じゃらし片手に生徒会室を飛びだしたのは ルルーシュがいなくなってから5分後のことだった。




2007.05.10