attitude
恋するオトメは好きな人のことは何でも知りたいと思うのです。
そして好きな人の変化にも気付くのです。
そう、それが恋愛のことなら尚更。
ルルは噂の転校生、枢木スザク君が来てから確実に変わった。
というか、私たちに対する態度は全く変わらないのだが、彼に対する態度が明らかに違うのだ。それは表情にも表れていて。
今までナナちゃんとそれ以外、というのが彼の認識だったと思う(自分で言ってて凄く悲しいが)。
そこに、スザク君が加わった。
今まで二つだった彼の世界に枢木スザクという人間が加わって、ナナちゃんとスザク君とそれ以外の三つになったのだ。
彼が転校してきてすぐに起きたあの事件で、彼はとてもいい人なのだということは分かった。
そしてルルとの間に強い絆があるということも。
今まで彼は必要以上に自分に触らせようとしなかった。もちろん触ろうともしない。
他人と接触を持つのを嫌っていたような感じを私はずっと持っていた。
表情も最初はどこか作り物のようだと思っていた時期があった。
けれどルルは一年以上その表情だったから、私の勘違いだと思っていた。
けれどそれはやっぱり違っていた。
スザク君が来てから、ルルの表情が変わった。
やっぱり私たちに向けていたのは作り物の表情だったのだと、嫌でも思い知った。
ナナちゃんへ向けるそれとも違う、枢木スザクだけの、表情。
そしてルルからの接触。触れられても嫌がらない、その態度。
好きな人のことって、ついつい目で追ってしまうから、簡単に気づいてしまった。
(ルル、スザク君のこと、好き、よね)
だって自分と同じ匂いがするから。
いかにも恋する乙女です、って感じ(乙女なんてルルに言ったら凄く怒られるだろうから言わないけど)。
そして周りとは明らかに違うその態度。
(あーあ、私、入り込むすき、ないじゃない)
あんな溶けるような顔、向けてもらったことがない。
あんな優しい声、かけてもらったことがない。
気付かなければただの仲の良い親友同士。けれど気付けばそれは片思い中の二人。
(それにしてもどうしてあの二人は気づかないのかな)
ルルはともかく、スザク君なんてあからさまに全身で好きです、って表しているようなものなのに。
お互いがお互いに向ける態度が特別な感情故であると、どうして気付かないのだろう。
(でもしばらくは教えてあげないんだから。だって、なんか悔しいじゃない)
ルルの好きな人がスザク君じゃない他の誰かだったら自ら身を引くなんて絶対にしなかったんだけど。彼は。
(ナナちゃん公認みたいだし。両想いなうえに彼女が認めるなら、私がどうこう言っても、ね。
それに引き裂く趣味はないし。)
さあ、涙を消すのよシャーリー!こうなったら、私が女の子の友達の中で一番になるんだから!
それまでに、自分の恋心を消さなくちゃ。自信はないけれど、ね。
2007.05.13
こんなのが書きたい13
見習い下っ端兵士スザクと皇女ルルーシュの出会い。パラレルです。そして続かない。
城下町に行こうと城を抜け出そうとしたルルーシュは男たちに絡まれてしまった。
民衆に顔を出しているルルーシュは、自分が城下町に出ていると知られると良くも悪くも騒ぎになると分かっていたので、
いつもウィッグをつけて髪を長くし使用人の格好をしていた。
誰が一国の皇女が使用人の服を着て町に行くということを予想するだろう。
そのおかげでもう何度も抜け出して城下に行ったが今まで皇女だということはバレておらず、
そしても今も幸か不幸かばれていない。
朝から飲んでいるのか、絡んできた数人の男たちは酒臭かった。
「やめてください」
「いいじゃねえか、お嬢ちゃん。城でこき使われるより楽しいこと、俺らとしようぜ?」
「お断りします。私は急いでいるのです」
表面では穏やかに言うも、内心、ルルーシュはイライラしていた。
場所は城門をでてちょっと進んだところ。
あまり大きな騒ぎを起こしてしまうと見張りが来てしまう。
それだけは避けなければならない。
もし自分が隠れて抜け出しているということが皇帝や兄弟にばれたら、とても厄介なことになる。
内心舌打ちをして、未だ無礼にも腕を掴んでくる男たちを一掃しようとした。
「やめてください」
その時、ふいに言おうとしていた言葉を自分ではない誰かに言われて声の方へルルーシュは振り返った。
そこには国の騎士団の制服を身に纏った青年。
助かったと思うと同時にしまった、とルルーシュは思わず一瞬顔を歪めてしまった。
「その子を離してください。彼女、嫌がっているではありませんか」
「うるせえガキが!子供が俺たちの邪魔をするんじゃねえよ!」
「…自分は兵士です。治安を乱す者は、許しません」
そう言うとその青年は、過熱した男たちが近くにあった棒や隠しナイフで襲いかかってきたのを軽やかにかわし、
そしてあっという間に全員に一撃を加えて行く。
手加減しているのだろうか、確実に急所を攻め込んでいたが、それでも男たちはやっと、
という風に体を引きずり逃げて行った。
青年は元から逮捕まではしようと思っていなかったらしい。
ぼうっとその目の前で繰り広げられた光景に目を奪われていたルルーシュの元に、その青年が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい…」
「よかった」
兵士にしてはまだ若い、けれどもこの年頃の青年がするには幼い笑顔で、ふわりと笑った。
その笑顔にルルーシュの胸は不意に弾んだ。
青年は掴まれていたところを確認するようにルルーシュの腕を取る。
酔っていたこともあるのだろう、強く掴まれていたそこは袖によって見えてはいないがおろらく痕が残っているに違いない。
そこを摩られ、痛みにルルーシュが微かに声をあげる。
青年はそれを心配そうに見て、ルルーシュを腕から手を離した。
「たぶん骨折や捻挫はしていないと思いますけど痕は残っていると思いますから、あとでよく冷やしてください」
優しくそう言う青年に、ルルーシュはこくりと頷く。
青年は周りを見回してもう一度、ルルーシュに話しかけた。
「先ほどの男たちはもういないみたいですよ。町に用事でも?」
「あ、はい」
「その格好、きみ、ここの城のお手伝いさんだよね。一人で買い物に行くときは注意しないとダメですよ」
「…すまない。十分、気を付けていたつもりだったんだが…」
「これから出かけるときがあったら僕に声をかけてください。時間があるときは、一緒に町まで行きますよ」
でも今日は無理ですけど、と申し訳なさそうに青年は苦笑した。
ルルーシュはその青年に見覚えはなかった。
城に仕えている兵士の顔はほとんど覚えているつもりだっが、先ほど自分のことを兵士だと言った青年のことは知らない。
けれど身につけている服装は彼が兵士であるということを物語っている。
ということは、城勤務ではなくて、治安軍属とかなのだろうか。
それじゃあ、と立ち去ろうとする青年を、ルルーシュは思わず呼び止めていた。
「あの!!」
「はい?」
不思議そうに振り返る青年。
「あなたは…この城の兵士、ですか?」
ルルーシュにそう言われて、青年は今度は声をかけてと言っておきながら所属を言っていなかったことに気づき、
そんな自分に苦笑するとルルーシュの方を向いて笑って言った。
「僕は枢木スザクといいます。今年の春、この城の兵士になったばかりです。
主に城門で見張りや城下町の見回りをしているので、出かけるときは一声かけてくださいね!」
こくりと頷くと、スザクと名乗った青年がまたにこりと微笑む。
ついであなたは?とルルーシュは逆に質問されてしまった。
(どうしよう。ここで皇女だと言ってしまえば、きっと彼とはこんな風に話すことはできなくなってしまう。)
「…ルル、です。私もこの城で給仕をしています。」
ルルーシュと名乗れば気付いてしまうかもしれない、ととっさに名前まで嘘をついてしまった。
いくらなんでもばれないだろうか、と内心焦るルルーシュにスザクはまた笑いかけた。
「ルル、だね。分かった。お互い城に仕えてることだし、また会うかもね、ルル」
「…うん」
それじゃあ僕は交代の時間だから!
そう元気よく駆け出すスザクの後ろ姿をルルーシュはただぼうっと惚けてみていた。
「くるるぎすざく…」
彼は今年の春に兵士になったばかりだと言った。だから自分も知らなかったのか。
(そう言えばお礼、言ってない)
トクトクといつもより胸の鼓動が速く脈打っていることも、どうしてまた話したいと思ったのかということにも気付かずに、
ルルーシュはその名前をもう一度口にした。
それは大国の皇女とただの見習い兵士の出会いだった。
2007.07.14
こんなのが書きたい16
にょたルルーシュで現代パラレル。スザルルと近所の憧れのお兄さんシュナイゼル。やっぱり続かない。
「さあ今日はどこに遊びに行こうー!!」
「会長、遊びに行くんじゃありませんよ。買い出しにいくんです」
「まあまあルルちゃん、そんなこと言わない言わない!せっかくみんなで出かけるんだから。ね、スザク!」
「え!?は、はい」
「ほら、スザクもこう言ってることだし」
「…どうしてそこでスザクにふるんですか」
帰宅する生徒や部活に励む生徒の賑やかな声が響く放課後。
生徒会で買い出しに、ということでメンバー全員で街に繰り出すことになった生徒会役員たちはその中に混じっていた。
はあ、と溜息を吐くルルーシュに、その恋人であるスザクはまあまあと隣に並んで宥めるように背中を軽くたたく。
でも本当は満更でもないよなあ、なんてスザクが呑気に思っていると校門の方に人の視線が集まっていることに気づいた。
「あの人誰だろう?誰かのお兄さんとかかな?すっごい美形…!!」
ざわりと女子たちが黄色い声をあげ、ん?と騒いでいた生徒会メンバーもそちらに自然と目がいった。
だから誰も気づかなかった。
一瞬にしてスザクの笑顔が凍りつき、反対にルルーシュは花のような笑顔をその顔に浮かべたことに。
生徒たちの視線を一身に受けるその先に見えたのは、真っ赤で遠目でもそれと分かる高級車と金髪で長身の、
「シュナイゼル兄さん!!」
え、とスザクを除く生徒会メンバーが反応したときにはもう、
ルルーシュはその短いスカートを気にすることもなく一直線にそちらに向かって走って行った。
一方スザクはというと苦虫を噛み潰したような表情でシュナイゼルを睨むように見る。
「やあルルーシュ」
「お久しぶりです!いつ帰ってきたんですか?」
「今日の午前中だよ。前に手紙でこの学校に通っていると言っていたから…早く会いたくて来てしまったんだ」
目を輝かせてシュナイゼルを見上げるルルーシュと、
そのルルーシュをとても優しい目で見つめ彼女の黒髪を愛おしそうに撫でるシュナイゼル。
どちらも見た目が飛びぬけて美しいため、その場にいる生徒のほとんどが二人に目を取られて動けなくなっていた。
と、誰も近づけなかった二人に近づくひとつの影。
「…お久しぶりですシュナイゼルさん」
「…ああ、スザク君か。久しぶりだね」
顔に笑顔を貼り付けて、だが声は普段より幾分低いスザクがルルーシュの隣に並んだ。
シュナイゼルもルルーシュに見せていたような笑顔とはまるで違う笑顔でスザクに微笑む。
「随分と急な帰国ですね」
「まあ君には関係ないけれど、とても大切な用事があってね」
冷たい空気が二人の間に流れる。
けれどルルーシュはそれに気付かないほどシュナイゼルとの再会に喜んでいた。
「ルルーシュ、これからちょっといいかい?」
「これから、ですか?」
ちら、とルルーシュはスザクを見た。
今から生徒会のメンバーで街に行く約束がある。けれど久し振りに会うことができた、
それも自分を迎えに来てくれたシュナイゼルを蔑ろにすることもできない。
スザクはルルーシュの視線に気づいていたが、あえて気付かないふりをした。するとルルーシュは少し困ったような顔をして、
状況が掴めず自分たちより数メートル後ろにいるミレイにその視線を向けた。
「あの、会長」
「…こっちは気にしなくていいわよ」
そのような表情で言われてしまえば、ミレイはNOと言えなかった。
申し訳なさそうに、けれど喜びを隠しきれない表情で頬を微かに赤くしてお礼を言うルルーシュ。
久しぶりの再会だということが聞こえていたミレイはその隣に立ち不穏な空気を出す男も十分気になったが、
許可をするしかなかった。
「約束があったのか…すみません皆さん。ルルーシュをお借りします。それじゃあ、スザク君。」
そう言ってシュナイゼルは助手席のドアを開けてルルーシュをエスコートし、自身は運転席に乗り込む。
その直前にスザクに向けて勝ち誇った笑みを添えて。
「あ、のー…スザク、あれ、だれ?」
控え目にリヴァルはスザクに声をかけた。
けれど返ってきたのは返事ではなく、ドゴ、というコンクリートが崩れる鈍い音だった。
2007.07.22