こんなのが書きたい21
スザルル←ジノ。ルルーシュは皇女でスザクが騎士でジノはラウンズ。
スザクがなんか事情があってジノがルルーシュの護衛をしてます、な話。いつものごとく中途半端。



「ルールー!!」
「げ」

大音量で自分の名前を呼ばれたのが聞こえて、ルルーシュはあからさまに顔をゆがめた。
女にしては高いルルーシュの身長を優に超えるその人物は束ねた金髪を揺らしながらひらひらと手を振り駆けてくる。

「ジノ、大声で名前を呼ぶなといつも言ってるだろう」
「はは!迎えにきたぜー!!」

すぐにルルーシュの隣にきたかと思うとその肩をぎゅっと抱く。
へらへらと笑うジノ。ルルーシュは咎めるように自分の胸元あたりにきた左手の甲をきゅっと抓った。 ジノは痛っ!と叫んだがその腕は離れることはない。
が、それもいつものことなのでルルーシュは特に気にすることもなく、慣れた風にそのままジノの腕の中に納まったままだ。

「それに、昨日も校内まで迎えに来なくていいと言っただろう?」
「いいじゃん、俺が迎えに来たいの!」
「外で待っててくれたらすぐ行くのに」
「なるべく長ーくいっしょにいたいわけよ、俺としては」

ジノは抓られた左手でルルーシュの長く綺麗な黒髪を耳に掛ける。
そしてそのまま頬にちゅ、と軽くキスをした。

「こら」
「忠誠の証ですから」
「頬にキスする忠誠の誓いなんて聞いたこともないがな」
「うん俺も」

ははは、と笑うジノにルルーシュは軽く溜息をついたが、それでもされるがままになっている。
そんなルルーシュの様子を興味津津といった風に見ているのはもちろんアッシュフォード学園の生徒たちだ。 いつもは麗しのクールビューティ、女王様等と称えられる学園のアイドルのような彼女がこの学校の生徒ではない男と肩まで組んで親しげに話している。 それは数日前から続くことで、見慣れない光景は新鮮に他ならなかった。
基本的にどこか周りと壁を作っている感じのあるルルーシュは、それでも生徒会のメンバーは他の生徒よりは親しかったが、 この金髪の男が来た日から学校を休んでいるスザク以外に気を許しているところなど見たことがなかった。
正直、興味があるのも本当だが、それよりもなんとなく少しムカッときているのが本音かもしれない。
スザクに気を許しているのは小さいころからの知り合いで恋人同士であることもあり当然だとは思うが、 見た感じそれと同じくらいその金髪男に気を許しているではないか。 触れることを許していて、それどころか頬にキスまで許して。
ルルーシュに限ってそんなことはないとは思うが、 スザクのいない間に他の男と親しげにしているルルーシュを見るとひょっとして浮気しているのではないか、と思ってしまうのだ。
スザクはこのことを知っているのだろうか。
少し離れたところで見ていた生徒会メンバーは一同にそう思っていた。
もちろん事情を知っているミレイを除いてだが、それでもミレイもあまりいい気はしてはいなかったりする。

「なールルー。このまま街に行かない?」
「行かない」
「即答!なんで、行こうよ行こうよ!!」
「…行けない、だろ」

ぶー、と文句を言うジノにルルーシュは苦笑し、前に垂れてきたジノの髪に指を絡めた。
自然に行われたその姿にジノは見惚れる。
ドキ、と自分の胸が高鳴るのを感じたジノは、その衝動のままにルルーシュを後ろから抱き締めた。

「いいじゃん。いま、スザクがいないんだからさ」
「ジノ…」

肩に顔を埋めて駄々をこねるジノを苦笑しながらルルーシュはその頭をぽんぽんとあやす様に撫でる。
その様子を見ていた生徒会メンバーはなんだかやるせなくなってルルーシュ!とその空気を裂くように叫んだ。

「どうしたリヴァル」
「これ、お前携帯忘れてたぞ!」

リヴァルが2人の方まで走ってくる。その後ろを少し離れて他のメンバーも付いてきた。

「ありがと」
「どーいたしまして」

ジノはさすがに顔をあげていたが、それでも肩は組んだまま。
リヴァルは気になってちらちらとジノを見ると、それに気づいたルルーシュがああ、とその腕から抜け出した。

「こいつはジノ。その…昔からの、知り合いだ」
「ふーん」

リヴァルがちょこりと会釈をする。
ちょうどその場に着いた他のメンバーも軽くお辞儀をすると、ジノはどーも!と明るく言った。

「ジノでーす!ルルーシュのおーじさまです!」

ニカ、と笑いそう言ったジノにルルーシュは肘で度付く。 う、と息を詰まらせるその慣れた感じにも、なんとなくリヴァルはムカッとした。

「誰が誰の王子様だ」
「だから、俺がルルーシュの…って携帯なってるぜ?」
「え?」

騒いでいて気付かなかったのか、確かにルルーシュの手の中にある携帯は音を鳴らしながらピカピカと光っている。 そしてそのディスプレイを見た瞬間変わったルルーシュの表情に、ジノはすぐに相手が分かった。
そそくさと携帯を持って離れるルルーシュ。今まで抵抗もしなかったくせに、とジノはぼそりとこぼした。

「もしもし、スザクか?」

少し離れて携帯を大事そうに持って話すルルーシュの表情は先ほどまでのとは全く異なっていて、 それにスザクという言葉が聞こえたリヴァルたちは内心ほっとする。

「ああ、大丈夫だ。何もないし元気だ。お前こそ大丈夫なのか?……ふふ、聞くだけ無駄だったな」

ぎり、と歯の鳴る音がして、リヴァルはびくりと隣を見ると、そこにはルルーシュとは違う意味で先ほどと表情の違うジノ。
リヴァルの背にぞくりとしたものが走った。

「…スザクスザクって…そんなにスザクがいいのかよ。いまそばにいるのは俺じゃないか…」

ぎゅと握りしめた両手が白く変色していた。

なんか複雑なことになってるのな。
リヴァルはルルーシュとジノ、そしてここにはいないスザクを思い出して、そう思った。




捏造ジノ。このときは一人称俺だと思ってた。




2008.05.12










涙などない
6話よりとりあえず7話が放送される前にやっとけ捏造。C.C.+ルルーシュ



「ナナリーが、」

そう言って、ルルーシュは泣いた。
こいつとそれなりの時間を共にしていたが、思い出せばこいつの涙を見たのは2度目だったと思う。
確か、1度目はギアスが暴走して、腹違いの妹を殺したとき。

「どうするつもりだ」
「もう意味などない」
「何の意味がないのだ」
「ゼロ」
「お前は、もう1人の自分を捨てると、そう言うのか」
「ナナリーは、自分で選んだ」
「なにを」
「皇女」

「総督」

「スザク」

「ユフィの、意志」

膝に顔を埋めてそう吐くルルーシュなど、今までに見たことがなかった。

「しかしナナリーはゼロがお前だと知らない」
「知ったところで何か変わるとでも」
「ナナリーにとってもお前は大切な存在だった」
「だから」
「知れば、お前の元へ戻ってくるかもしれない」
「…ナナリーは、ああ見えても頑固者だ」

く、とルルーシュが笑う。

「ナナリーははっきりと言ったんだ」

「ゼロは間違っていると」

「いつもお兄様と言って笑ってくれたその声で」

「ゼロを否定して」

「スザクと同じ」

「ユフィと同じ」

「そのことを、あの子は言ったんだよ」


だから、もう俺はいらないじゃないか。
なんて情けない声だ。これが天下を揺るがすゼロだというのか。

「だからゼロを棄てるというのか」
「もう、意味がない」
「しかしお前はもう一度、日本人に希望を与えた」
「…」
「合衆国日本の建国を謳った」
「…」
「死刑にされる扇たちを助けた」
「…」
「それを、お前は見捨てると言うのか」
「…」
「お前が記憶を書き換えられていた1年、私はあいつらと共にいた」
「…」
「あいつらがどれだけお前を必要としていたのか、私は知っている」
「…」
「私も、私の願いを叶えるためにも、お前が必要なのだ」
「…」
「それでも、お前はゼロを棄てると、そう言うのか」
「…」
「これだけの人間に必要とされながら、お前は自分を捨てると」
「…やめろC.C.」
「自覚があるのか」
「やめろC.C.]
「それは現実からの逃避だとは思わないのか」
「やめろっ!!」

ルルーシュが怒鳴った。
けれど、それでも膝から顔を上げることはなかった。

「もう何も考えられないんだ。頭が働かないんだ。身体が、動かないんだ…」

「…ナナリーに選ぶ権利はある」

「ナナリーがそれらを選んだんだ」

「俺は兄だ」

「ナナリーが何よりも大切で、彼女が一番で」

「だから、ナナリーが決めたことを、応援してやるのが、いい兄だろ?」

「そのためにも、ナナリーが特区日本を成功させるためにも、」

「一番いいのはゼロが」

「俺が」

「消えることだろ」

カーテンを閉め切り電気さえつけてない薄暗い部屋にはゼロの仮面とマントとその他の衣装が床に散乱していた。

「なあC.C.。俺は、これからどうすればいいと思う?」


泣いたのはナナリーを連れて帰れなかったと言ったその時だけだった。
それも、たった一粒涙が頬を伝った程度だった。
今も、声もしっかりしているし、泣いてなどいない。

ただ、ようやく顔を上げたルルーシュはうっすら笑っていて、そんな風に笑うルルーシュなど見たことがなくて、 私はどうしようもなく、目の前の男が泣いているように、見えた。




2008.05.15










黒い光の夢を見る
ロロ→ルル 7話派生



ねえ兄さん。
僕の任務は兄さんの監視だったんだ。
記憶が戻ったら殺す。
僕にとってそんなの簡単なことで当たり前のことだったのに。

「ロロ」

僕の名前を呼んで兄さんが微笑む。
嘘の記憶でも、僕を家族と認めてくれた。
記憶が戻っても、兄弟だと言ってくれた。

(たとえそれが嘘だとしても。僕を利用するための方便だとしても。)

僕は、兄さんの本当の弟に、なれるのかな。


そう少しでも思った自分が、きっと愚かだったんだ。

「愛してる、ナナリー!!」

枢木スザクの狡い罠。
必死に電話の向こうにいるだろう兄さんの、本当の妹に叫んだこの言葉。
皇女に戻った妹に拒絶、否定された兄さんの変わりよう。
魘されながらベッドで零した言葉は、兄さんの本当の妹の名前。

(今は、今は僕がそばにいるのに)

本当は分かっていたんだ。
兄さんの中にはあの妹しかいないことくらい。

(それでも僕は)

「兄さん、僕だけはそばにいるよ」

あなたの本当の弟になれることを、こんなにも望んでしまっている。

(だから、だから少しでいいから)

ぼくをみて。




2008.05.21