まず初めにさらしで胸を潰す。
何重にも巻いて、それを胸の脇でほどけないように止める。
身長を誤魔化すように底の高いブーツを履いて、声の高さを隠すように変声機で声色を変える。
最後に世間を騒がせる反逆者の仮面を被って、さあこれで出来上がり!

「今日こそお前を殺してみせる、枢木スザク!」

わたしはゼロ。俺はルルーシュじゃない。
だから、ゼロはスザクを殺さなければならないのだ。
ルルーシュの愛するスザクはゼロにとってはただの邪魔ものなのだから。
涙は仮面を被る前にもう捨てたわ!




スザ←ルル♀ しかし操縦桿を握る手は震えるのです。 2008.02.17






どうしても欲しいものがありました。
けれどそれはわたしにとっては、とても綺麗で手の届かないものでした。

「そんなに欲しいのならお前の身体を使ったらどうだ。スカートの丈を短くして色の濃い派手な下着をつけろ。
少し大きめのブラウス1枚だけを身に着け上から3つほどボタンを開け、 そして部屋に誘い唇にグロスでも塗ってベッドにでも寝転んでみたらどうだ。」

魔女が言った。
プライドがずたずたに切り刻まれて頭に血が上った。

けれど、そんな方法で手に入れられるのなら、と考えた自分が確かにいたのです。




スザ←ルル♀ わたしは汚れている 2008.02.17






黒の騎士団が行動を起こし、それにスザクがナイトメアで駆り出された日は、彼はとても荒々しく俺を抱く。
俺の部屋だったり生徒会室だったり、誰も使ってない教室だったり授業中に階段の踊り場だったり裏庭だったり。
やめて、とどれだけ泣き叫んでもスザクには全く聞こえていない。
いや、恐らく聞こうとしない。
そうして自分が満足するまで抱いて抱いて抱いて、時に抵抗する俺を殴って、 意識を飛ばした俺が目を覚ますと自室のベッドの上であることが多々だった。

この日もそうだった。
久しぶりにゼロとランスロットの一騎打ちになり、当然勝てるわけもなく無頼を破壊された衝撃で全身を強打していた。
とてもスザクの荒々しい行為に付き合える身体じゃなかった。
逃げる俺を捕まえて右頬を何度も叩かれ、もうどうにでもなれと諦めた。
眼を覚まし、身体にこびり付いた精液を洗い流そうと脱衣所の鏡に映った自分の身体を見て、醜いものだなと思った。
小さな胸を中心として散乱する歯型や赤黒いうっ血痕。全身に広がる打撲による青痣。
醜いものだな、と今度は声に出して、笑った。

次の日案の定腫れた頬と動かない身体を引きずり学校に行くとリヴァルたちに驚かれた。
スザクは頬に張った湿布を見ても顔色一つ変えず、まるで初めて知ったかのように俺に接した。

そんなスザクを見て、彼の狂気を湧かせるのも鎮めるのも自分なのだと思うと、それだけで満足だった。




スザ←ルル♀ わたしは狂ってなどいない 2008.02.17






魔女に言われたことを試してみた。
後で来るように、と伝え自室に戻り下着を変えた。寄せて上げるブラジャーでいつもより谷間を作った。
大きめのシャツはなかったけれど、ただでさえ短いスカートを更に短くして、ボタンを3つ開けた。
持っていなかった派手な下着とグロスはミレイに選んでもらった。
意味ありげに笑う彼女に後で何を聞かれるか分からなかったが、それでも私には男を誘う知識などなかった。
ドキドキと逸る心臓を右手で抑える。
これはプレゼントよ、とミレイに渡された香水の香りが甘く漂った。


1時間経っても2時間経っても、夜中になっても朝日が昇っても、スザクは来なかった。


「ごめん、昨日、急に呼び出されてさ」

教室で顔を合わせた彼はへらへらと笑いながらこう詫びた。
私はそれを笑顔で「大した用じゃなかったから」と言った。
下着も普段の物に戻しグロスを落とし、スカートの丈を戻して香水を落とした。

「惨めな女だな」

結局一睡もできずにいた私に、朝日とともに訪れた魔女が嘲笑った。
私も笑った。
涙さえ出ない。ただ全てが自嘲でしかなかった。




スザ←ルル♀ プライドも何もかも投げ捨てて 2008.02.17






パソコンに流れるのはエリア11の副総督が孤児院を訪問しているという生放送。
花のように微笑み子どもたちと遊ぶ義妹は聖女と呼ぶに相応しいと、本当にそう思った。

カーテンは閉まりドアも窓もロックされ、部屋にある光源と音源はそのパソコンのみ。
ただ、生々しい匂いだけが閉め切った部屋にこもっていて、吐きそうになった。

微笑み子供の手をとり走ったり話したりする彼女は輝いていた。
その隣に、同じように優しく微笑み穏やかな眼で義妹を見守る、癖っ毛の騎士。

(ああ、俺はそんな眼など向けられたことがないのに。)

久々のオフだと言っていた彼が、情事の最中にかかってきた携帯に応えて己の欲だけを吐きだして出て行ったのが1時間前。
朝っぱらから突然部屋に押し入り当然のように犯して、そして無関係のように出て行った彼。
ただそれを拒むこともせず、行くなとも言えなかった、わたし。
全てに於いて真反対のようなユーフェミアとわたし。


内股を伝う彼の白い体液だけが、ただそれだけが、ユフィに与えられていないスザクなのだと、耳を塞いで目を閉じた。




スザ←ルル♀ 欲にまみれたおひめさま 2008.02.17